近年、人間の脳が持つ機能を小型なデバイスで再現するAI技術の開発が世界中で進められている。
自動運転・産業用ロボット・ドローンなどと多くの分野でAI技術の応用が進んでいるが、AIを搭載するためには追加のハードウェアが必須で大型化してしまうデメリットが存在しており、小型のAIハードウェアを搭載したいというニーズが表面的に存在している。

東芝が小型のAIハードウェアを開発

5月27日、東芝はジョンズホプキンス大学と共同で、世界で初めて脳内で空間認知をつかさどる海馬の機能の一部を小型な脳型AIハードウェアで模倣・再現させることに成功したことを発表した。

これによって、高い空間認知能力が求められるインフラ点検向け自立移動型ロボットなどの小型化に期待出来るという。
また、今回の開発成果をさらに発展させることにより、複雑な脳機能を小型化されたハードウェアで模倣・再現し、様々な分野で高知能なAI技術を実装することが可能で、中でも高い空間認知能力が求められるインフラ点検向けの自律移動型ロボット等の小型化が可能となるとしている。

※東芝は5月29日に本技術の成果を、札幌市内のIEEE国際学会(回路とシステム)にて、発表した。

脳型AIハードウェア

現在の多くの脳内の動きを模したハードウェアは、深層ニューラルネットワークをデジタル処理する方式を取っているものである。
一方で、脳内の情報伝達はデジタル処理ではなくアナログ処理によって発する電気的信号をやり取りされており、空間認知等の脳機能を忠実に模倣するためには脳の神経細胞と同様にアナログ処理をすることによる脳型AIハードウェアの開発が不可欠である。
しかし、これを実現するためには脳に関する専門的な知識が必要となるため実現は難しいとされてきた。

東芝は、脳神経科学、生理学や工学分野が融合するジョンズホプキンス大学と共同研究を行い、東芝の保有する回路実装技術をと、ジョンズホプキンス大学が保有する脳の神経細胞を忠実に再現する神経細胞回路設計技術を組み合わせることによって脳型AIハードウェアの構築を実現するに至った。

東芝とジョンズホプキンス大学は、ネズミの海馬に着目して研究したハードウェアの実証実験を行い、同様の実験結果は過去に発表事例がなく(東芝調べ)、脳型AIハードウェアを用いた脳機能再現の研究開発を加速することができ、将来は自律移動型ロボット等の小型化向けた活用が期待できるとしている。

東芝は、脳型AIハードウェアのさらなる小型化の実現に向け研究を進め、AIのさらなる高知能化を目指したい考え。