3つの先進技術が実現する「スマートインスペクション」とは

2019年7月18日(木)、積水ハウス株式会社は、住宅業界初となる点検システム「スマートインスペクション」のデモ体験会を実施した。「スマートインスペクション」とは、「半自動操縦ドローン」・「床下点検ロボット」・「小屋裏点検ロボットカメラ」という、”3つの先進技術”を用いることで、”3つの効果”を生み出すことのできる点検システムのことである。その3つの効果とは、「高品質なアフターサービスの提供」・「お客様の負担軽減」・「建設業界が抱える人手不足の改善」となっている。この記事では、スマートインスペクションを実現する「3つの先進技術」についてと、それが生み出す「3つの効果」について紹介していきたい。

3つの先進技術:①半自動操縦ドローン


◆用途
住宅の屋根やソーラーパネル、外壁、雨樋等を点検するために使用される。

◆使用方法
【従来】
作業は2名で行われる。1名は撮影したい箇所の近くに竿を立ててこれを支える。もう1名は先端についたカメラで撮影と点検を行う。撮影・点検後、点検結果をその場で口頭でお客様に説明する必要があるので、点検結果を判断できる熟練のスタッフのみが点検を行う。1週間〜10日後、点検結果報告書を作成し、お客様にお渡しする。

【半自動操縦ドローン】

まずドローンを垂直方向に飛ばす。水平方向の移動に関しては、ドローンのカメラとiPadが連動しているので、画像を確認しながら点検したい箇所をiPadでタップするだけで自動で移動する。撮影もiPadに映し出された画像を、そのままiPadで撮影するだけで行うことができる。なお、撮影した画像はそのままクラウド上にアップされ、カスタマーズセンターの専任スタッフが分析と判断を行う。その後そのまま画像入りの点検結果報告書が作成される。クラウドを介して確認できる報告書を元に、その場で点検結果をお客様に説明する。点検者は熟練のスタッフでなくても良く、ドローンの操縦資格のあるスタッフが1人いれば作業が可能。

◆「スマートインスペクション」導入のメリット

  • 従来は撮影箇所を変えるたびに、竿を縮めて移動、撮影という手順を踏むため作業時間が長かった。しかしドローンを使用することで、今まで2人で行なっていた作業を1人で行えるようになり、作業時間も5分に短縮することができる。
  • 従来の方法で使用される竿の高さは11mまでの高さしか撮影ができなかったが、ドローンは30mまで飛ばすことができるため、3階建ての住宅など、高さのある場合でも撮影できる。

3つの先進技術:②床下点検ロボット


◆用途
床下点検、床下設備、防蟻点検を行うために使用される。

◆使用方法
【従来】
暗い閉所にアフターサービス社員自らが潜って点検する。こちらも点検結果を判断しお客様に伝えなければならないため熟練のスタッフでなければ作業できない。

【床下点検ロボット】

ロボットを床下に入れた後はiPadで簡単に操作でき、ロボットに取り付けられたカメラを通じて点検する。こちらも撮影した画像はそのままクラウド上にアップされ、カスタマーズセンターにて点検結果報告書が作成される。その報告書を元に、その場で点検結果をお客様に説明する。

◆「スマートインスペクション」導入のメリット

  • 従来はアフターサービス社員が床下に潜って作業していたので、アフターサービス社員の負担が大きいものであったが、床下点検ロボットを使用することでロットにより点検を行うため、アフターサービス社員の負担を大幅に軽減できる。
  • 床下は狭いので、アフターサービス社員が入り込めない箇所は点検できなかったが、そのような場所もロボットで点検することができるようになった。
  • 床下に潜り込む従来の点検では、床下の汚れで自身が汚れてしまい、その状態で室内を汚してしまう問題があった。しかし潜り込む必要がなくなることで、アフターサービス社員が汚れることがなくなる。点検をしたロボットが汚れたとしてもロボットを手で持って移動させられるため、室内を汚す心配もなくなる。

3つの先進技術:③小屋裏点検ロボットカメラ


◆用途
小屋裏も点検に使用される。

◆使用方法
【従来】
小屋裏にアフターサービス社員自らが頭を突っ込み点検する。こちらも点検結果を判断しお客様に伝えなければならないため熟練のスタッフでなければ作業できない。

【小屋裏点検ロボットカメラ】

 

小屋根裏に、小屋裏点検ロボットカメラを入れる。カメラからの映像がiPhoneで確認できるので、iPhoneの画面上で点検する。こちらも撮影した画像はそのままクラウド上にアップされ、カスタマーズセンターにて点検結果報告書が作成される。その報告書を元に、その場で点検結果をお客様に説明する。

◆「スマートインスペクション」導入のメリット

  • 従来の方法は、自身で小屋裏に登って点検するため、アフターサービス社員の負担が大きかった。しかし、小屋裏点検ロボットカメラを用いることで、アフターサービス社員自身が小屋裏に登る必要がなくなるため負担を軽減できる。
  • 今までは小屋根裏に登るため脚立を室内に運び入れる必要があった。そのため室内の荷物の移動をお客様にお願いしていた。また、脚立を運び入れることで、室内の床の損傷の心配もあり、お客様の負担は大きいものであった。だが、小屋裏点検ロボットカメラを使った点検方法では脚立を必要としないため、荷物を移動する必要がなくなったこと、床損傷の心配がなくなったので、お客様の負担を軽減することができる。

3つの効果はどのように実現できるのか

◆「高品質なアフターサービスの提供」を実現できる理由について
今まで撮影できなかった箇所・高さ・角度の全てを点検できるようになったこと。また、点検結果をまとめた報告書は1週間〜10日後にお客様の手元に届けられていたが、クラウドを活用し、カスタマーズサービスと連携することで、点検後お客様にその場で確認してもらえるようになった。これは信頼感を生み出すことにも繋がっている。これらの理由から「高品質なアフターサービスの提供」に繋げることができるのである。

◆「お客様の負担軽減」を実現できる理由について
3つの先進技術を導入することで、今まで2人で2時間かかっていた作業を、1人で1時間45分で行うことができるようになった。さらに室内を汚す恐れのある点検ではなくなったことから、「お客様の負担を軽減」することができる。

◆「建設業界が抱える人手不足の改善」を実現できる理由について
従来は点検結果をその場で判断し、口頭でお客様に伝えていたため熟練のスタッフでなければ点検できなかった。しかしスマートインスペクションを導入することで、簡単に点検でき、さらに点検結果をカスタマーズセンターが判断してくれるため、熟練のスタッフでなくても行うことができる。また、簡単かつ負担の少ない点検方法となることで、高齢者でも女性でも誰でも作業を可能にできるため、ダイバーシティ推進にも寄与することができる。

積水ハウスが目指すのは「効率化」ではなく「誰もが活躍できる環境をつくる」こと

デモ体験会の最後には質疑応答の時間が設けられた。その中で上がった質問の中に「スマートインスペクションを導入することで、作業の効率化を図ることができるとのことだが、それは何人の点検スタッフを削減できるのか」という質問があがった。しかしこれに対し、執行役員の小井孝員氏はこのように述べている。

「スマートインスペクションを導入する一番の目的は人員削減ではなく、むしろあらゆる人の活躍の機会を増やすこと。今後も女性や高齢者でも作業のできる環境を作っていくことを検討している。」

昨今、効率化や人員削減が叫ばれている中で、そうではない姿勢を示す小井孝員氏の姿は印象的であった。「人」を大切にする姿勢があるからこそ、社員もまた、積水ハウスで働くことにやりがいを感じられるだろうし、お客様と、お客様の住宅に対し真摯に向き合うことができるのではないだろうか。それがひいてはさらなる高品質なサービスに繋がっていくのだろうと感じられる体験会であった。