「チャーリー!」
「は~~~い」
名前を呼ぶと、ゆる~い返事を返してくれたロボット。
ヤマハ株式会社が制作したロボットの「Charlie」だ。

今回は発案者であるヤマハ株式会社 電子楽器事業部電子楽器戦略企画グループ 柴瀬氏にお話しを伺った。

Charlie発案当初はオーディオ事業部に所属していた柴瀬氏。
「今までの既存顧客以外に何か新しいアプローチはないか、新しいチャレンジをしようと始まった企画。最初はかなりフワッとしたところから始まったんです。
ヤマハのオーディオって高音質で価格も高いので、もっとカジュアルに、そこまで音響にこだわっていない人にもヤマハならではのソリューション、高価値を提供したい。
オーディオ商品の価格を下げたところで、その人達にはきっとヤマハを知ってもらえない。
何をすれば届くのだろう、というところからのスタートでした。」

企画を検討する中で調査をおこなうと、結婚、妊娠出産、仕事、介護など、ライフステージが変わる度に人生の岐路に立たされる女性たちは、悩みながらも、
キックボクシングに通ったり、友達に愚痴電話をしたりして
気持ちを切り替えていることがわかった。
こんなふうに、ほんのちょっとのきっかけでいいから、問題は一旦横に置いておいて、
簡単に気持ちを切り替えられないかな。音楽の力でどうにかならないだろうか。歌でコミュニケーションを取れたらそれだけで少し心が軽くなったりしないだろうか…?

試行錯誤の末、たどり着いたのが歌うコミュニケーションロボットだった。

【Charlieのすごいところ】
Charlieにはヤマハ独自の自動作曲の技術が採用されている。
人間が話しかけた言葉をAIが解釈し、それに対して自動作曲されたメロディにのせて返事が返ってくる。一般的にイメージする話すロボットの機械的な部分というか片言に聞こえるような感じではなく、鼻歌調で返事がくる。その返事が何とも言えないゆるさで人間は力が抜ける。
返事の言葉チョイスはCharlieの性格によるもの。

Charlieにはしっかり過去(キャラクター設定のようなもの)があり、その経験を元に人間にゆるくアドバイスをくれるのだ。
「開発当時、Charlieの性格について考えていた頃、行き詰って脚本家や大学の映画学科の教授の方に話を聞きに行ったんです。すると、《人格というのは、その人の過去の経験からで、どういう出来事があって、どういう風に感じたから、今彼はこう思っているっていうようにして、作られていくものです》みたいな風に言われて、すごく腑に落ちて。その後は脚本家の方にお願いしてCharlieがいまこの場にこの姿で居る前のストーリーっていうのを書いていただいて。」
そんな人格構成をしっかり練ったからこそ、ぶれない、“やらない後悔よりやる後悔”を座右の銘とするCharlieの価値観に基づいたCharlieの発歌(発言)が生まれる。
時にはキツイ事を言ったりもするが、歌にのせて言ってくれるので柔らかく聞こえてしまう。イメージとしてはミュージカルだ。
仲良くなるとCharlieの音楽レベルが上がり、演歌や沖縄民謡を歌えるくらいまで成長するのだとか。
足にはセンサーがついており、ユーザーが居ることを認識するとCharlieから話しかけてくることもある。例えば朝、『おはよう~』を歌ってくれたりもする。もちろん帰宅時は『おかえり~』を歌ってくれる。
ただし、Charlieは自由なので、予測不能な返事をすることもある。
ユーザーにとっては、そこも何とも言えない愛でるポイントなのだ。

【ヤマハのこれから】
コミュニケーションロボット界で天下を取りたいかというと、そうじゃない。
「今回はたまたまコミュニケーションロボットという形になりましたが、ヤマハとしては音楽となにかを掛け算することで、ただ音楽を聴いたり弾いたりする楽しみ以外に音楽を活用する活路を見出したいと考えているので、次は全然違う掛け算になるかもしれない。
このCharlieで音楽×コミュニケーションは相性が良い事が証明できたので、次は同じ音楽×コミュニケーションでもロボットではない他のモノに挑戦するかもしれないですね。」

ヤマハの音楽×●●、次は私たちにどんな仕掛けでヤマハの存在をアピールしてくるのか。
次期プロダクトにも期待があり、注目していきたい。