NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)と東北大学多田隈研究室は8月26日、従来の車輪ではスムーズに移動することが困難な、毛の長い絨毯や点字ブロックなどの環境でも、360°連続移動できる円形断面型クローラー」の開発に世界で初めて成功したと発表した。

独自の機構「オムニクローラー」が備える高い走破性・耐荷重性に加えて、高密度に配置されたクローラーにより、駆動力を保ち続けることができるため、あらゆる方向への連続的な移動を実現。

電動車いすや総重量の大きな移動型ロボットなどに使用する駆動機構としての用途が期待できるとのこと。

円形断面型クローラー 東北大学 多田隈研


以下、プレスリリース引用

円形断面型クローラーについて

車いすや移動型ロボットといった重量が大きいロボットに使用されている一般的な車輪では、柔らかく毛の長い絨毯や踏切内の溝・段差といった路面を走行することは困難である。

従来、不整地の路面を走行する際は、複数個のローラーで構成されたことにより全方向移動が可能なオムニホイールが採用されていた。しかし、段差乗り越え性能に限界があることや車輪の接地面積が小さいため、柔らかい路面上をスムーズに移動できないことが課題だった。

そんな中、NEDOと東北大学は2015年から、「全方向駆動機構を核とした革新的アクチュエーション技術の研究開発」に取り組み続け、360°への連続移動を実現した円形断面型クローラーの開発に世界で初めて成功した。

クローラーが備える3つの機能

この度、と東北大学が開発した円形断面型クローラーは、特徴的な3つの機能を持ち合わせている。

  • 本体の姿勢や路面の状態に左右されず、モーターの回転方向を切り変える必要もなく継続的に全方向に移動可能
  • 歯車とチェーン、ベルトを使用することで、摩擦電動によらず高い駆動力の伝達が可能。
  • 高い不整地走破性(軸方向の段差乗り越えた傘10mm、その直交方向の段差乗り越え高さ30mm、溝踏破長さ140mm)を実現

円形断面型クローラーは、上記通りの不整地走破性や駆動力の高さから、一般の車輪が走りにくい環境下でも、クローラーの向きを変えることなく、縦・横・斜め方向へ自由に移動可能だ。

また、世界初となる全方向駆動クローラーは、移動を行うために使用する2つのモーターのほか、歯車なども最小限の構成であるため、保守性にも優れており、小型化が可能な応用範囲の広い全方向移動機構のベース技術だと言える。

根幹を成す開発技術

今回の円形断面型クローラーの根幹を成す技術には、新たに考案された「スクリュー式差動回転機構」(上記画像)がある。

スクリュー式差動回転機構とは、回転軸の動力をねじ歯車により垂直方向に変換する構造を線対象に配置したもの。これによって、極少の伝達部品数で、左右2つの入力回転を全方向駆動機構として必要な前後・左右の移動へと直結する公転・自転の出力に変換させる仕組みを実現した。

関連リンク

■NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構):https://www.nedo.go.jp/

■東北大学 多田隈研究室:https://www.rm.is.tohoku.ac.jp/~tadakuma/