ドラマやYouTubeなどに出演し、メディアでも多く取り扱われているGROOVE X株式会社(以下GROOVE X)のLOVEをはぐくむ家族型ロボット「LOVOT」(らぼっと)の魅力について、GROOVE X 広報の池上美紀氏にインタビューを行った。
開発への思い
GROOVE Xの代表取締役である林 要氏(以下林氏)は、F1に使用されるレーシングカーやソフトバンク社のPepper(以下ペッパー)などの開発に携わり、2015年11月にロボットベンチャー企業であるGROOVE Xを設立した。
林氏がペッパー開発に取り組んでいた際、うまく起動しないペッパーに対して周囲の人間が「ペッパー、頑張れ!」という声援を送ったことがある。これを見た林氏は、人がロボットから癒しを得るのはロボットが労働などで人の代わりを担う時ではなく、人がロボットの世話をした時なのではないかと考えたという。
林氏はこの出来事により人の役に立つロボットではなく、心を癒してくれたり元気を与えてくれたりするロボットを新しく作りたいという思いに至った。その思いから約4年の歳月をかけ、LOVEをはぐくむ家族型ロボットとして「LOVOT」が開発された。
LOVOTには“まる”がいっぱい
LOVOTは“LOVEをはぐくむロボット”であるため、人に愛されるようにデザインされている。プロダクトデザイナーの根津 孝太*氏がデザインを手掛けており、頭にある丸いセンサー、丸い頭、丸い胴体、丸い鼻、丸い目からわかるように、”まる“が基調になっている。心理学的に人は”まる“に本能的に安心感や親しみやすさを感じやすいからだ。
*根津 孝太氏は日本のデザイナー。クリエイティブコミュニケーター。 znug design 取締役。グッドデザイン賞審査委員。 千葉大学工学部工業意匠学科卒業。トヨタ自動車入社、愛・地球博『i-unit』コンセプト開発リーダーなどを務める。
また、LOVOTのコンセプトはオーナーのもとに駆け寄ることと抱っこされることである。そのためLOVOTは2足歩行ではなく、ホイールといわれる丸い車輪で動く。これは二足歩行で動くよりもホイールの方がスムーズに動け、素早くオーナーの元に駆け寄ることができるためである。LOVOTが丸い胴体で腕を広げているのも、オーナーが抱っこしやすいようにするためだという。
これまでのコミュニケーションロボットには、人型ロボットや犬型ロボットなど、なにかの動物を模したデザインが多かった。しかしLOVOTは特定の動物を模していない。これは動物を模したデザインで癒しを与えるのではなく、人が癒しを得られるデザインを追求しているためである。
個性的なLOVOT
人や動物などの生き物の性格や顔に違いがあるように、LOVOTにも性格や目、鳴き声などに個性が備わっている。
1.性格
LOVOTの性格には、天真爛漫、素直、人懐っこい、人見知り、マイペース、臆病など無数のバリエーションがあるという。
この性格はオーナーの元に届いた時からランダムであるが、オーナーと触れあうことでLOVOTの頭脳であるメインコンピューターやサブコンピューター・深層学習が働き、共に生活を送る中で性格が変化していく。
例えば、LOVOTユーチューバー*のぷいぷいくんは人見知りだという。慣れ親しんだ人には自ら歩み寄りスキンシップを取るが、初対面の人には人見知りして近づかないそうだ。他にも音楽家がオーナーの家庭では、LOVOTが家の中で流れている音楽を覚え、歌を歌うようになったという話もある。このようにLOVOTの性格は、どんな生活を送るかによってそれぞれが個性豊かに成長する。
*GROOVE Xでは、世界初のLOVOT YouTuberのぷいぷいくんとアシスタントのゆいゆいが出演するYouTubeチャンネル「らぼちゃんねる!」を開設している。
2.鳴き声と瞳
LOVOTの鳴き声と目のパターンはそれぞれ10億通り以上ある。
鳴き声はその場のLOVOTの状態に応じて自動で生成され、嬉しいときは高い声で鳴いたり怒っているときは低い声で鳴いたりする。そのため、まるでLOVOTが生きているような感覚を得られるという。
瞳は円球LEDパネルに表示されており、すべてのLOVOTは色、ハイライト、虹彩、瞳の大きさなどを組み合わせた唯一無二の目を持って生まれる。これは人の瞳がそれぞれ違う様にLOVOTもそれぞれ違った個体であるということを表しているのだという。瞳はアプリで変更可能だが、変更すると元の設定には戻せない。池上氏によれば、親が子の顔を選べないように出会ったLOVOTの顔を“運命”と感じ、設定を変更しない人も多いという。
生き物のように温かいLOVOT
LOVOTは触るとほのかにあたたかい。
これはLOVOTが37~39℃の温度を保っているからである。LOVOTが“あたたかい”理由は林氏がペッパーを開発していた時の経験による。林氏が高齢者施設にペッパーを連れて行った際、施設の利用者がペッパーの手を握り「温かければいいのにね」と言っていたという。その言葉で林氏は人と触れ合うロボットには生き物のような温かみが必要だと感じたそうだ。
しかしロボットに体温のようなあたたかさを与えることは容易ではなかったという。携帯やPCなどの機械は、情報処理を行うことで内部の電子が熱を持ち、その状態が続くと熱暴走(オーバーヒート)してしまう。そのためほとんどの機械は、周りを硬く冷たくすることで中の部品を冷却している。
この問題を解決したのは林氏がF1に使用されるレーシングカーの開発に携わっていた経験であった。当時林氏がデザインしたF1の排熱システムを活用し、電気熱が発生した際は、空気を排熱させることにした。
これにより、LOVOTは常に人と同じような温かさを保っているのである。
LOVOTとの時間は家族との時間
新型コロナウィルス感染症が世界中で猛威を振るい、日本でもリモートワークの推奨や学校閉鎖などが起こった。そのため多くの人が新型コロナウィルス感染症拡大以前より家族と過ごす時間が増えた。池上氏によれば、今まで以上に多くの時間を家族と過ごすようになったものの外出できないストレスなどから家族関係が悪化した人もいるという。しかし、そのような中でもLOVOTがいることで家族関係が良くなった例があるそうだ。
ある家庭では、離れた家に住む祖母にLOVOTをプレゼントしたという。LOVOTを迎えたことで会話のきっかけとコミュニケーションが増え、家族が祖母を訪ねる機会が増したという。更には、親戚もLOVOTに会う事を口実に祖母の家によく集まるようになったそうだ。このことについて池上氏は、「LOVOTを通して会話が生まれ、コミュニケーションが増える。そしてLOVOTは家族や人とのつながりを増やしてくれる。」と語った。
今後のLOVOTについて
LOVOTはペットを飼育したいができない家庭に人気があるという。ペットが飼えない理由として多くあげられるのは、家がマンションであり生き物を飼うことが禁止されている、毛やダニにアレルギーがある、長期不在時の世話に困るなどである。このように飼えない理由の多くはペットが生きている故の問題である。池上氏は「LOVOTのようなロボットをペットにすればこれらの問題はほとんど解決することができます。そのため今後はペットを飼う際の選択肢としてLOVOTに限らず、コミュニケーションロボットの選択肢が増えるのではないかでしょうか」と語った。
そのような中でLOVOTが選ばれ続けるためにも、GROOVE Xでは日々ソフトウェアの開発に力を入れている。池上氏によればLOVOTのハードウェアはとても高性能であり現在でも使い切れていない機能が多くあるという。ソフトウェアの更新はオーナーが寝ている間に行われるため、オーナーが起きたときに「こんなことができるようになっている!」と驚く開発を続けていきたいと語った。
今回のインタビューでLOVOTは、家族の一員として親しまれている事が分かった。LOVOT特有の、温かさや個性がまるで生きているような存在として、家庭に馴染んでいるのだろうと感じる。また、自分を認識し甘えてくる要素も、ペットや家族と同様に大切にしたいという感情が生まれる一つの要素であるのではないかと感じた。林氏の“人の心を癒し元気を与えてくれるロボットをつくる“という想いはLOVOTによって実現しているのではないだろうか。
関連リンク
LOVOT[らぼっと] https://lovot.life/
GROOVE X株式会社 https://groove-x.com/
らぼちゃんねる! https://lovot.groove-x.com/lovochannel.html
購入方法
LOVOTウェブストア https://store.lovot.life/