2022年3月、ウィングロボティクス株式会社が提案する「5Gカメラを用いた遠隔ロボット制御システム」の研究開発が、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターによる2021年度の公募型共同研究共同研究に採択されました。
この研究により、これまで多大な時間と労力を要していた製造現場の協働ロボットの動作教示が、離れた場所からの遠隔操作で容易に実施できるようになり、リモートファクトリーの実現および製造現場への協働ロボットの普及促進が期待されます。
都産技研による公募型共同研究として採択
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター (以下、都産技研) は、中小企業との共同研究を通じて、5Gを利用したロボットやIoT関連の製品開発を促進する「公募型共同研究」を実施しています。
2022年3月、ウィングロボティクス株式会社 (所在地:東京都中央区、代表取締役社長:馮麗萍/以下、ウィングロボティクス) は、都産技研が公募した「次世代通信技術を活用したソリューション研究」に、「5Gカメラを用いた遠隔ロボット制御システム」の研究を提案し、採択されました。研究開発経費の一部を都産技研が負担し、本年度に実証実験を開始します。
共同研究者であるFCNT株式会社とともに実施する実証実験では、主に以下の2点を目的としています。都産技研内に整備されたローカル5G環境を活用、また、ユーザー企業を模して、スマートフォン製造工場であるジャパン・イーエム・ソリューションズ株式会社の製造ラインも実証実験の場として活用します。
1.ローカル5G環境でのトラフィックを中心とした通信性能評価(※都産技研内のみ)
2.製造現場の安全確保と遠隔オペレーターの操作性を両立させるライン設計と検証
5Gを用いた遠隔でのロボット制御
少子高齢化が急速に進む日本では労働力不足が深刻な問題です。さらに、製品のライフサイクルの変化や、製造品目の多品種少量化が進み、複雑化した製造工程に対して既存の人員で対応できないことも、労働力不足に拍車をかけています。この問題を解決する一つの手段として、ウィングロボティクスは人とともに働く「協働ロボット」の導入を提案してきました。ロボットを1台から“派遣”するサブスクリプションの仕組みをつくり、導入時の初期コストを大幅に軽減することで、中小企業でも手軽に導入できる事業を展開しています。
しかし実際に製造現場で「協働ロボット」を運用していくためには、コスト以外にも解決しなければならない課題があります。代表的な課題の一つが、導入後も頻繁にロボットの調整が必要になることです。
多品種少量生産に対応していくためには、製造ラインは絶えず作業工程の変更が必要になります。そのたびにロボットに新しい動作を教示しなければなりません。また、ロボットの異常停止(チョコ停)発生時にも処置が必要になります。従来、このような場合は専門のオペレーターが現場に出向いて対処するしかありませんでした。
今回採択された研究は、まさにこの問題を解決する取り組みです。5Gの高速通信を活用して、遠隔地にいるオペレーターが現場のロボットの状況をリアルタイムに確認できるようになり、同時に、ロボットへの動作の教示・調整も可能となります。また、動作を教示する際には、自動計画を併用することで、教示コストの低減を図ります。
「リモートファクトリー」が可能に
遠隔からの操作は場所を選びません。たとえ工場が海外にあったとしても、このシステムによっていつでも、専門のオペレーターによるロボットの調整ができるようになります。コロナ禍で新しい働き方「テレワーク」が定着しましたが、この研究の成果により、時と場所を選ばず工場を見守ることができる「リモートファクトリー」が実現します。
専門の担当者が現場に不在という環境下での運用ではなく、自動計画を併用しつつ遠隔からオペレーターが適宜サポートできる環境を提供することで、ユーザー企業の安心感は増し、製造現場への協働ロボット導入の促進が期待されます。
システムインテグレータ企業の負担軽減も
今回採択された研究成果の恩恵を受けるのは、協働ロボットを運用するユーザー企業だけにとどまりません。将来にわたってロボットの普及が加速的に進むその裏で、特にシステムインテグレータ企業の業務負荷は、これまで以上に増加することが予想されます。この負荷を軽減するサービスの提供も、この研究の目標の一つです。
ユーザー企業とシステムインテグレータ企業の双方に寄与できるサービスの開始は、2023年を目標としています。サービスは当初、研究の成果をもとにしたスモールスタートとなりますが、ニーズを踏まえて順次対象範囲を拡大し、お客様の多岐にわたる用途・要件にお応えしていきます。
同時に、業界内におけるロボットに関するリテラシー向上を狙った人材育成の支援、ロボット導入の支援も実施いたします。
羽田でのイベントでは、ロボット操作に子どもたちも大はしゃぎ
採択後の2022年4月、羽田空港(東京)に隣接する羽田イノベーションシティで、都産技研が協力団体の一つとして参画した「羽田スマートシティEXPO 2022春」が開催されました。今回、採択された各企業のロボットやシステムが一堂に会する中、ウィングロボティクスも会場に「協働ロボット」を展示し、遠隔操作のデモンストレーションを行いました。
来場者に実際にジョイスティックを握ってもらい、数メートル離れたロボットを操作してもらったのですが、特に子どもたちには大人気で会場には歓声が絶えませんでした。
【公募型共同研究に携わる4団体】
<公募元>東京都立産業技術研究センター(東京都江東区)
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター(以下、「都産技研」)は、東京都により設置された試験研究機関であり、東京都内の中小企業に対する技術支援(研究開発、依頼試験、技術相談、人材育成など)により、東京の産業振興を図り、都民生活の向上に貢献することを役割としています。 都産技研の総合力を十分に発揮し、「頼りになる都産技研」を目指して、技術支援や研究開発を推進しています。
<申請者>ウィングロボティクス株式会社(東京都中央区)
日本企業の競争力を向上させ、人間らしい豊かなくらしを実現するため、特に中小製造業の人材不足解消のためにロボットの導入を提案しています。月1台からロボットを”派遣”するサブスプリクションの仕組みをつくり、低コストによるロボット導入を可能にしました。
<共同研究者>FCNT株式会社(神奈川県大和市)
5G時代に向け、エッジAIテクノロジーを通じて技術とビジネスをつなぎ、お客様に最良な課題解決と価値を実現するソリューションを提供します。本研究を通じて、FCNTの強みであるローカル5G無線通信技術とエッジAIカメラを用いた、協働ロボット制御を補完するエッジAI技術を提供し、中小製造業をはじめとしたリモートファクトリーの実現を目指します。
<ユーザー企業>ジャパン・イーエム・ソリューションズ株式会社(兵庫県加東市)
スマートフォン、IoT機器をはじめとするODM・EMSにより長年培った、ものづくり力を有する国内EMS企業として、お客様の立場でEngineering~ManufacturingまでMade in Japanによるワンストップの製造ソリューションをご提供します。生産ラインの自動化や多様な製品を効率よく製造する「スマートファクトリー」の取り組みに、今回の研究の活用を目指します。
【ウィングロボティクス株式会社 概要】
本社所在地:〒103-0023 東京都中央区日本橋本町3-3-6 ワカ末ビル7階
代表取締役社長:馮 麗萍(フォン リーピン)
設立:2020年3月
事業内容:次世代協働ロボットのサブスクリプション提供