コロナウイルスの感染が拡大長期化する中、病院での院内感染に対する早急な対策が求められております。社会医療法⼈鴻仁会と株式会社シャンティは、従来は受付に来て問診票を書いてから判断していた感染症の疑いを、病院入り口でかつ、スタッフが非接触のまま来院者全員にスクリーニングできるロボットの運用を開始しました。
■運用開始の背景
コロナウイルスによる国内感染者は既に全国で2,122名(3月31日:厚生労働省発表)に達し、医療現場において院内感染を防ぐことが医療現場での至急の課題となっています。地域医療の中核にある岡山中央病院では、医療ケアを必要とする外来患者のための日々の医療サービスの提供と感染症拡大の防止という二つの課題を解決するために、感染症の疑いのある患者を、人と非接触で隔離された場所に速やかに誘導する必要性に迫られていました。
■感染症周知の課題
病院入り口で看板やポスター等で感染症の疑いのある来院者のお断りを周知をしていても「ポスターに気づかない」「自分は大丈夫」という来院者が多く、院内感染が起こることを懸念していました。この懸念を払拭するためには、来院する方々全員に声がけをして注意喚起をすることが最も効果的では?と、岡山中央病院の医療従事者では議論されていました。しかし、医療従事者を来院者と直接対応させることは従事者を危険に晒すことになると共に、潜伏期間を考えると来院者に対するリスクになるという課題を抱えていました。
■産婦人科病棟でパラメディT A P I A を2年間活用した経験
金重院長はI C Tによる医療改革の可能性に着目し、2年前からコミュニケーションロボット「パラメディT A PI A」を産婦人科病棟で導入していました。
導入された2台のパラメディT A PI Aは毎日、出産を迎える妊婦さんに入院に関わる注意事項や事務手続きなどを看護師に代わって説明をしてきました。忙しい看護師の業務の一部をサポートしつつ、妊婦さんの知りたいことを繰り返し説明してきた2年間の中で、パラメディT A P I Aは、妊婦さんにも看護師にも知ってもらいたいことをちゃんと伝えてくれる大切なロボットに成長しました。
妊婦さんの疑問に寄り添うパラメディTAPIAを紹介する看護師
■コミュニケーションロボットの活用
「パラメディT A P I Aは、医療現場でちゃんと伝えてくれる」という経験をした金重院長と医療関係者は「感染症対策の説明をパラメディT A P I Aに任せられるのでは?」と直感し、医療従事者とシャンティをテレビ会議に召集し、感染症対策のためのパラメディT A PI Aの運用方法を議論し、会議から1週間後の 2020年3月30日に運用を開始しました。現在、ロボットが提供している機能は以下となります。
(1) カメラで人の動作を感知 →声がけ
ロボットに搭載されたカメラを使い3m以内に居る人の動きを検出し、受付に来る前にロボットを使った問診をうけるように声がけを行います。
(2) 問診 →手指消毒推奨
熱や倦怠感の有無などの質問を発話と同時に画面上表示し、回答ボタンを押す事により問診に回答します。問診内容は、日々の状況に応じて容易に変更て行くことが可能なようなっています。通常の場合問診が終わった後は手指消毒の案内を行います。
(3) トリアージ→スタッフへ通知+待機場所案内
問診への回答で感染症の疑いがある場合、医療従事者が持っているスマートフォンへアラート音と共に感染の疑いのある患者が来たことを通知します。また来院者には院内の待機場所でスタッフが来るまで待機してもらうように案内します。
■患者さんの声
「出産後の定期検診で来たのですが、こういう時期で少し不安だったのですが、(出産前に産婦人科病棟にいたロボットが)皆さんに入口で感染症の問診をしてくれていて安心しました。(小児科受診:20代女性)」
「声がけで気付きました。ちゃんと手を消毒することも教えてくれて便利だね。(整形外科受診:60代男性)」
「今までロボットに関心がなかったけど、人との接触を減らしたいまさにこういう時にロボットが活躍するんだなと思いました (消化器内科:70代女性)」
■ロボットと共に未来をみる
今回の感染症対策としてパラメディTAPIAの導入した金重院長は、そのメリットとロボットを含めた医療へのICT技術の可能性について述べています。
「人と人とを介さずに早めに症状のある人をピックアップできる。その上で早めに隔離できるのが最大のメリット。医療崩壊を起こさない対策が一番大事だと思っている。病院の許可が無い人は病棟に入れなくするなどの対策も含め、感染防止策をさらに強化するために何ができるかを検討しています。」
シャンティは引き続きコロナウイルス終焉に向けて、ICT技術を活用して、人と人との接触を低減し、高齢者や疾患のある方、妊婦などの方々に対して安心した医療サービスを受診できる活動に貢献していきます。
岡山中央病院での活用事例を紹介した動画
【株式会社シャンティ】
高齢化社会での医療介護現場の人材不足問題、 また高齢者や患者様への快適な暮らしをロボットたちと共に支えようと2005年10月に設立。ロボットと共にみるというコンセプトの様々な医療分野のロボットアプリケーションを手掛ける。2018年よりロボットによる医療説明・問診を行うパラメディSをリリースし、既に全国の医療施設で白内障手術説明などで運用がされている。COVID19に対するスクリーニング業務も岡山中央病院以外にも都内の安部病院などのクリニックでも既に利用されている。