遠隔地で暮らす世界の子どもにワクチンを

世界の子どもにワクチンを
ドローンで届けられた最初のワクチン接種をする看護師のMiriam Nampil © UNICEF_UN0265424_Chute
 
 
【2018年12月18日 ポートビラ(バヌアツ)/ニューヨーク発】

南太平洋の国バヌアツで、生後1カ月のJoy Nowaiは、民間の小型無人機ドローンで遠隔地の島に届けられたワクチンを接種した、世界で最初の子どもとなりました。

ワクチンの輸送範囲は、島の西部ディロンズベイ(Dillon’s Bay)の険しい山岳地帯から東部の遠隔地クックスベイ(Cook’s Bay)まで約40kmにわたり、そこでは13人の子どもと5人の妊婦が公認看護師のMiriam Nampilによってワクチンの接種を受けました。クックスベイは、小さく、分散したコミュニティで、保健センターも電気もなく、徒歩か小型船を除いてはアクセスできません。

「本日のドローン輸送は小規模なものですが、世界の保健衛生にとって大きな一歩です」と、ユニセフ事務局長ヘンリエッタ・フォアは述べました。「支援を届けるのが最も難しい遠隔地の子どもへの予防接種は今も困難が伴いますが、ドローン技術によって、そのラストマイル(ワクチンを届ける最後の区間)を乗り越え、変革をもたらすことができます」

ワクチンはある特定の温度で運ぶ必要があるため、輸送の難しさがあります。気温が暖かく、約1,300kmの範囲にわたり80以上の、山の多い、遠隔地の島々が広がり、道路の数も限られるバヌアツは、ワクチン輸送にとって特に厳しい環境下にあります。結果として、国の子どもの約2割、或いは5人に1人が子どものころに必要なワクチン接種を逃しています。*

「川を渡り、山を越え、雨の中を歩き、岩棚を越えていく時、ワクチンを冷却するための保冷ボックスを携帯するのは至難の業です。私はよく船を利用しますが、悪天候のためしばしば運航中止になります」と、ドローンで届けられた最初のワクチン接種を担当した看護師のMiriam Nampilは述べました。「ワクチンの旅路は長く厳しいのが常であるため、子どもたちのワクチンを接種しに行けるのは月に1回のみです。しかし今、このドローンを使えば、島の最も遠隔地域で暮らすより多くの子どもにワクチンを届けられるようになると期待しています」

エロマンゴ島(Erromango)へのドローン輸送で、ワクチンは発泡スチロールの箱に、氷袋と温度の測定記録装置とともに入れられて運ばれました。ワクチンの温度が許容範囲から外れた場合には、電子インジケーターが起動するようになっています。
 
 
ドローン輸送試験の様子
Swoop Aeroによるドローン輸送試験の様子 © UNICEF_UN0265396_Pacific

先週の輸送試験では、バヌアツの保健省がユニセフの協力を得て、Swoop AeroとWingCopterのドローン企業2社の操縦士によるドローン輸送試験を実施しました。今日のドローン輸送の成功のカギを握っているオーストラリアのSwoop Aero社は、50kmにわたって多くの島々やウェイポイント(経路上の地点)を越えた後、搭載物を目標地点の2m以内に投下することに成功し、試験の第一フェーズを通過しました。

また、政府が民間のドローン企業と契約を結び、ワクチンを遠隔地に輸送することは世界的にも初めてです。ドローンの操縦士は入札手続き後に選ばれ、契約ごとに責任を有し、輸送に失敗した場合は費用が支払われません。

バヌアツ政府は今後、長期的視点から、ワクチンのドローン輸送を国の予防接種プログラムに統合し、保健物資を輸送するといったさらに広い用途でのドローン利用も検討する予定です。また輸送試験によって得られたデータは、同様の状況に直面している世界の国々において、どのようにドローンが商業利用できるかという点を検討する上でも活用されます。

「初めて行われたワクチン輸送は、バヌアツにとってだけでなく、世界中でワクチンを受けられずにいる何千人もの子どもにとっても大きな可能性を秘めています」とフォアは述べました。「最高のイノベーションであり、世界の子どもたちにさらに手を差し伸べる、民間企業の潜在性を解き放つものでもあります」

本プロジェクトは、バヌアツの保健省および民間航空局が主導し、ユニセフ、オーストラリア外務貿易省のinnovationXchange、および世界エイズ・結核・マラリア対策基金(The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)が協力しています。

*バヌアツ予防接種率調査2016
 
 
 
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