次世代のデバイスと呼ばれるロボットは、少しずつ実用化されてきている。
しかし完全な実用化までには長期の研究期間や様々なコストがかかるため、ロボット開発をする企業には相応のリスクと負担がかかるのが現実である。
そこで、ロボットを簡単に、より効率的に開発できるソリューションがあると伺い、「ロボット汎用プラットフォーム」の開発責任者であるVAIO株式会社NB事業部 部長 児嶋 信二氏に話を伺った。
「ロボット汎用プラットフォーム」とは
ロボット開発やロボットサービスの提供を検討している企業に対して、ハード・ソフト・ソリューション・クラウドサービス・サポート・各種サーバなど、全ての機能を提供する総合ソリューションプラットフォームである。
ロボット開発やロボットサービスを考えている企業に最適な環境を提供し、このサービスを利用することで短時間且つ効率的にロボット開発することが可能となる。
このプラットフォームには2つのハードウェアが存在し、それぞれがロボットに求められる機能に最適化されている。
「Middle」
顔認識・液晶画面の搭載・ロボットに動作をさせる等、より多機能なカスタマイズが可能だ。
既にEMS事業で導入実績があり、現在も本ハードウェアを搭載した製品の開発が進行中である。
「Simple」
対話を主目的としたコミュニケーションロボットとして必要十分な機能を提供するハードウェアである。
ぬいぐるみをはじめとする筐体内にVAIOが独自開発した共通のハードウェアを埋め込むだけでコミュニケーションロボットとして機能する。
EMS…電子機器製造受託サービス
NB事業部 部長 児嶋 信二氏へ インタビュー
――「ロボット汎用プラットフォーム」を開発するにあたっての背景はございますか?
「VAIOは、パソコンの設計・製造を行っておりますが、PCが作れるならば他にもIT・IoT関連商品も作れるのではないかと考えました。世の中の需要に合わせた商品を作ってみようとしたのがきっかけです。
現在では、アイデアの実現に苦しむ企業様を救うべく、外部から依頼を頂き設計製造を行うEMS事業もやっております。
VAIOがソニー傘下だった時代、『aibo』の設計・製造を担っていた時期があり、それを知る企業様からロボットが作れないかとご依頼があったことから、ロボットの設計・製造事業を始めることになりました。
代表的なものでは、『Palmi』の量産・『KIROBO mini』・『ガンシェルジュ ハロ』の設計、製造を受託し、とても反応が良かったことから本格的にロボットの設計・製造を受託する事業を始めました。そこで、ロボットを自社開発することが難しい企業様に対してもプラットフォームを提供出来るのではないかと考え、現在の【ロボット汎用プラットフォーム】を新たに立ち上げました」
aibo… ソニー株式会社が開発するペットロボット
Palmi…富士ソフト株式会社が開発する自立型コミュニケーションロボット【DMM. make ROBOTS Product by FUJISOFT】
KIROBO mini…トヨタ自動車の手のひらサイズのコミュニケーションパートナーロボット
ガンシェルジュ ハロ…バンダイ株式会社の『機動戦士ガンダム』AIロボット
―プラットフォームの特長を教えてください
「ロボット開発及びサービス運用のために必要なハード・ソフト・ソリューション・クラウドサービス・サポート・各種サーバなど、全ての機能を提供する総合ソリューションプラットフォームとなります。
これまではロボットの開発に必要な機能全てを1社で担うのは難しく、複数社と連携する体制を作るには時間もお金もかかってしまうため、ロボットを開発したいという企業様の夢を叶えるには高いハードルがありました。
そこで、VAIOがこれまでロボットを製作してきた経験を活かし、ソフトウェアやクラウドサービス等については、協業実績があり、確かな知見に信頼のおける他社様と連携をすることで、【ロボット汎用プラットフォーム】のご提供が可能となりました。連携する企業様は「VAIO テクニカルパートナー」という呼称のパートナーとして、アライアンス連携を行い、プラットフォーム推進にもご協力いただいています。
ロボットを動作・運用するには、初期設定だけでなく販売後のサービス、サポートや製品の保守なども必要です。
そういった緻密な部分も含め全てVAIOが提供するプラットフォームにおいてワンステップで請け負うことが可能ということが、一番の特長です。カスタマーサポートの面でも、長年VAIOパソコンで培った経験・ノウハウが生かされていると考えています。」
―プラットフォームをどのような方々に利用してもらいたいですか?
「特にターゲット意識はしていませんが、既に開発技術を持った企業様だけでなく、ロボット開発とは無縁な企業様からも受付業務をロボットに任せたいといったお声をいただいています。
ロボデックスにおいても、『ロボットをどうやって開発したら良いのか』等の多くの質問を受けましたが、質問される企業様は開発にあたって何かしらの課題で困っているのではないかと思います。
そういった企業様に使ってもらえればと考えております。」
ロボデックス…様々な用途のロボットの開発技術、IT、AI技術までロボット社会の実現を促進するあらゆる技術が出展している展示会 (第三回2019年1月16~18日)
―今後の展望をお聞かせください
「ロボットは、パソコンやスマートフォンに続く第三のデバイスと語られ、実際、様々な企業がロボットを開発・模索しています。しかし、どのようなロボットが普及するのかは確立されていないと考えています。
ロボットで何かをやってみたいと考えた企業様にVAIOの【ロボット汎用プラットフォーム】を採用いただくことで、ロボットという難しい分野への参入ハードルを下げ、ロボット開発を活性化させ、さらに事業を拡大していきたいと考えております。そして大きな夢であるかもわかりませんが、国内のロボットビジネスの裾野が拡がっていくお手伝いをVAIOで少しでも出来ればと思っています。
この【ロボット汎用プラットフォーム】はあくまでもプラットフォームなのでロボットの中核であるアーキテクチャであると考えていただきたいです。このアーキテクチャをベースに、自由にカスタマイズすることも可能というわけです。
ですから、ロボットだけではなくIoTデバイスとしても使用することができます。
【ロボットだけでなく様々なIoTデバイスにも活用できるIoTプラットフォーム】としてお客様に自由にご利用いただきたいと考えています。
―外部に向けて、何か発信したいことはありますか?
「VAIOはPCに加えて、様々なハードウェアの設計・製造等を受託し、かなりのノウハウを蓄積してきました。サービス・サポート面も含め、音声系をはじめとする様々なソリューションのご提案やご提供が出来るように、今後もより一層努力を続けてまいります。
通常、商品が出来上がるまでは『企画→設計→試作→生産』という過程がありますが、大抵は設計または生産の段階で多くの制限が生まれ、当初、企画したものと異なる商品が作られてしまうリスクがあります。
VAIOでは、設計だけでなく、調達、製造、サポートなどの量産に関わる全てのメンバーが初期の段階から入り、商品企画をするため、最初の試作品がほぼ完成に近い形で出来上がります。
『試作品の手戻りがなく時間やコストも節約でき、お客様が考えていたイメージどおりの商品を量産品としてご提供出来る』これがVAIO独自の生産方法『上流設計』です。
お客様から『これは本当に試作品ですか?』と驚かれることも多く、満足度が高いことが伺えています。VAIOは今後もより高品位・高品質なモノづくりをこころがけ、常に進化を続けていきたいと考えています。」
ロボット専用サーボモーターについて
児嶋氏は、未来メディアのインタビュー後「VAIO独自開発のモーター」についても以下のように語ってくれた。
世の中で製造されているロボットの多くは市販のモーターをそのまま流用しており、ロボット専用のモーターを使っているケースはわずかです。
そのためか、ロボットが動作する度に「ジー」という大きい機械音が生じてしまい、人によっては不快を感じてしまうことも多く、特にコミュニケーションロボットでは音声認識に支障をきたす場合があります。
VAIOでは、動作音の小さいロボット専用のモーターを開発することで問題を解決しています。
VAIO独自開発のモーターで、特有の機械音が少なくなっている。
児嶋氏は、「ロボデックスに訪問してくれた企業様から多くの問い合わせを頂きましたので、需要に応じてお客様にご協力出来るようにしていきたいと思っています。」と語った。
VAIOのEMS事業は、パソコン事業に次ぐ新たな事業の柱として成長してきた。
今回のVAIOの【ロボット汎用プラットフォーム】の提供によって、低コストかつ素早く事業展開できる仕組みが広がれば、「新たなモノづくりの形」が加速し、コミュニケーションロボットはより普及することが期待できるだろう。
<VAIO株式会社とは>
VAIO株式会社は、ソニー株式会社からPC事業を引き継ぎ、2014年7月1日に設立された。
PC事業、受託開発、ソリューション事業また、それら付随するサービスを行っている。
<関連リンク>
VAIO株式会社コーポレートサイト:
https://vaio.com/top/
VAIO株式会社EMS事業について:
https://vaio.com/ems/
VAIO株式会社公式Facebook:
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VAIO株式会社公式Twitter:
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