ROBOT開発偉人伝#2
〜古田貴之さん/千葉工業大学fuRo(未来ロボット技術研究センター)所長〜
名前:古田 貴之(フルタ タカユキ)
生年月日:1968年
出身:東京都
経歴
-1996年
青山学院大学大学院理工学研究科機械工学専攻博士後期課程 中退
青山学院大学理工学部機械工学科 助手
-1998年 moroph2開発
-2002年 moroph3開発
-2003年 千葉工業大学fuRo所長 就任
幼少期の憧れ
二歳から七歳までインドで過ごしていた古田さんは、おやつ目的で近所のお坊さんの元に通っていた。おやつ前に聞く説法の中でも「人の目に見えるものは、ほんの一部でしかない。本質は目に見えない部分にこそある。」という考え方は今も影響を受けているそうです。
幼い頃からロボットアニメが大好きで、好きになるキャラクターは天馬博士(鉄腕アトム)やのりまきせんべい(Dr.スランプアラレちゃん)といったロボットではなくロボット博士でした。中でも妻子持ちで、メカ開発の下請けと本部の板挟みになりながらも悪の業務に勤しむコスイネン(タイムボカンシリーズ)は大人になった今も憧れる永遠のヒーローだといいます。
この世にいた証を残したい
十四歳の時学校で意識を失い、昏睡状態から目覚めると病院のベッドの上、下半身は麻痺し動かなくなっており、医者に余命5年と宣告されます。回復する確率は10000人に1人の脊髄の難病でした。
入院生活からすぐ、同じ病室の人が吐血して亡くなる姿を見ました。半年程度で6人部屋の患者さんは古田さん以外入れ替わっていました。
古田さんは入院中人生の本質についてずっと考えていたそうです。そんな中「人生とは生きた時間が本質ではなく死ぬ瞬間にどれだけ自分自身が満足できたかが本質なのではないか?僕が好きなロボットで生きた証を残そう」と思い立ちます。
病気の発症後、同情や親切で車椅子を押される事を悔しく感じ、ボランティアの人にハイキングに連れて行ってもらってもどこか醒めた気持ちでいた古田さんは、自分の足で自由に思うところに行けるカッコいい二足歩行型車椅子ロボットを作れば誰かの不幸を幸福にでき、生きた証を残せるのではないかと考えます。
その後、古田さんの病気は奇跡的に回復。より精力的にロボット開発の学習を進め電子回路やプログラムの知識をつけ、歩けるまでに回復するとパーツを買いに出かけるのがリハビリ代わりとなりました。
チームを通して
引用: HallucIIχ| fuRo
青山学院大学の理工学部でロボット研究の第一人者が先生になると知り、進学を決めます。
入学してすぐ研究所を訪ね、本来は大学4年生から所属するはずの研究所に新入生にして入り浸ります。周りに対抗意識を燃やす古田さんは煙たがられ、友人はいませんでした。
大学院に進みいざ人間型ロボットを作ろうと周りに声をかけますが、一定期間内に結果を残さなければならない大学院生の中からは時間のかかるロボット開発の賛同者は現れませんでした。そこで古田さんは研究室に入ったばかりの素人同然の4年生を集めチームを作ります。
もちろん4年生にはロボット開発の知識・技術はありませんが、どうしても協力者が必要な古田さんは開発に必要な知識を習得してもらうために夏休み中ほぼ毎日講習を行い、秋頃に本格的に開発を始めることができました。
古田さんはチームでのロボット開発の中でメンバーそれぞれに自分にはない視点や才能があることに気づきます。自分の成果ではなく、チームとしての成果を考えるようになり、メンバーと信頼関係を築く事ができました。この時のメンバーは一生の財産だそうです。
この時に開発した人工知能を搭載しサッカーやバク転をするロボットmorph2は話題を集めニュースにも取り上げられました。
面白かったら、徹夜しちゃう
研究が始まると楽しくなって寝なくなるという古田さんは月の睡眠時間が10時間程になり、開発前は75kgの体重が開発後には45kgに減っていることもあるそうです。
憧れのインダストリアルデザイナー山中俊治氏にデザインを頼んだ際も、morph2完成の興奮が冷めあらぬまま3時間ロボットの説明を行い、その場で承諾を得てしまいました。
後に山中氏は「morph2も面白いけど、それ以上に古田さんは面白い」とおっしゃっていたそうです。山中氏の協力を経て生まれたのがmorph3です。
未来を創る
若い頃夢見た障害物を避けて走る全方位移動車椅子。
昆虫・動物のような見た目から乗り物にトランスフォームするHalluc。
全方位に移動できる8本足のロボットカーHallucigenia01。
変形型パーソナルモビリティCanguRo。
利用シーンに応じてトランスフォームするロボット技術応用の知能化安全技術を搭載した未来のモビリティILY-A。
未来を作るためには技術だけ開発していてもよくない、いかに人の本質、世の中をサポートしていけるかと語る古田さんは、モノ作りではなくモノゴトヅクリを大切にみんなを幸せにしていくことを考えている。
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